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捨てられる銀行3 未来の金融【橋本卓典著】 [書評]

金融庁への取材力で好評な「捨てられる銀行」シリーズの第3弾です。

森前金融庁官がスルガ銀行を褒めていたことから森前長官への評価も二分されますが、フィデューシャリー・デューティーの概念を金融機関に植え付けた功績は大きいと思います。

後任の現長官である遠藤氏にも期待が高まります。

本書の中で金融機関の上層部が方針を何度もひっくり返して現場が混乱する様子が描かれています。

投信の回転販売や外貨建て保険のノルマがきつくなる一方、フィデューシャリー・デューティーを遵守すべき指導も現場になされ、現場が混乱しているようです。

先日、メガバンクの新卒採用数が減少すると発表されました。一般職の廃止をする銀行も出てきています。

野村證券は支店の2割を統廃合してネット取引を改善するとの報道も出ました。

就職活動をしている学生の中には、銀行や証券の人気が落ちているのだから、あえて逆張りの発想で金融業界を目指そうと言う方もいると思います。

ただ、銀行も大手証券も採用数を減らすとは言っても私の感覚だとまだ新卒採用数が多すぎると思います。

結局、本書に出てくるようなノルマと倫理に板挟みに会い、支店で高齢者相手に嫌々、金融商品を売りつけるビジネスモデルは急に変えられないということでしょうか。

確かに回転売買から預かり資産の増加を評価基準に変更した金融機関も出てきていますが、その結果、軒並みリテール分野では赤字となっています。

ネット銀行、ネット証券の勢いが増す中、既存の銀行(特に地銀)、対面販売の証券会社は徐々にシェアを奪われていくでしょう。

睨みを利かせた金融庁の前で強引な金融商品の販売ができない現場、かといってマイナス金利で運用も上手くいかないなど金融機関の収益源が揺らいでいます。

消費増税をきっかけに日本でもキャッシュレス社会への移行が国家政策として進められるようですが、決済機能を奪われた銀行の将来が本当に心配です。

中国におけるアリペイやウィーチャットペイのような決済手段やジーマ信用のような仕組みが日本で急速に根付くか疑問ですが、そのような方向に進むのは世界的な動きだと言え、日本だけが拒否できるようなものではないと感じます。

捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む (講談社現代新書)

捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む (講談社現代新書)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/13
  • メディア: Kindle版



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