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ルポ貧困大国アメリカⅡ(堤未果著) [書評]

市場原理が働きすぎた結果、生き辛くなってしまったアメリカ社会のレポートとしてベストセラーになった「ルポ貧困大国アメリカ」の続編です。前回からの違いはオバマ大統領が誕生したところでしょう。しかし、大方の期待を裏切り、結局はオバマ大統領も市場原理主義の流れには逆らえずに次々と改革に挫折しているようです。既存勢力が医療制度改革案を骨抜きにするなど相変わらずアメリカは企業の力やロビイストが強すぎる影響を持っていると感じました。

アメリカのサービス業分野ではインドなどへのオフショアリングによって職が他国に奪われているという話を良く聞くようになりましたが、今の流行は刑務所の囚人にアウトソーシングすることのようです。インド人よりも安く、かつ米国英語が話せる人材が活用できるということで刑務所がコールセンター業務を行っているケースもあるようです。発注側は、囚人に職業訓練の機会を与えているからすばらしいことだと捉えているようです。市場原理主義、合理主義もここまできたかと怖くなりました。

しかし、これが他国のことだと安心できません。米国の出来事は日本でも似ような形で10年後に訪れます。社会主義体制に比べれば、市場主義は優れています。しかし、今の米国のように行きすぎた市場原理主義、超合理主義ではほとんどの国民は不幸になるだけです。

アメリカの成功事例を輸入することに日本は力を入れてきました。無理やり実力主義の人事制度を導入した結果、多くの大手企業が大混乱し、結果的に世界的な競争力を逆に失いつつあるのは皮肉な話です。

米国のやり方をそのまま日本社会に当てはめるのは危険です。市場主義を取り入れつつも、現在の米国を不幸にしている行き過ぎた市場主義や超合理主義とは距離を置いたのが無難だと思います。

本書と前作、また、マイケルムーアの「シッコ」「キャピタリズム」などを見ないとアメリカの現状はなかなかわかりません。日本のテレビや新聞では米国の現状を余り伝えないようです。米国の株価は回復傾向にありますが、ほとんどの米国民は逆に益々、苦しんでいるようです。

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

  • 作者: 堤 未果
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/01/21
  • メディア: 新書



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