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タワマン文学(ツイッター文学)本を続けて読む [書評]

Twitter(X)上で人気を集めたタワマン文学作者2人の著書を読了した。

まずは外山薫氏の「君の背中に見た夢は」という小学校受験を舞台にした小説。

外山薫氏はX上の窓際三等兵氏の親戚という設定である。推測だが前橋高校か高崎高校から慶應義塾大学に進学して現在は副業として覆面作家をされているのだろう。

大学時代と30代前半までしか東京におらず、もうすぐ40代も終わろうとしている私にとって現在の東京の「お受験」の事情がリアルで伝わってくる良書であった。

先日、タレントの櫻井翔氏が御子息を慶応幼稚舎に入れるべく対策を練っているとの週刊誌記事を見かけた。週刊誌記事なので詳細は知らないが、本書に出てくるようにお受験の点数だけで合否が決まる世界ではないようなので仮に週刊誌記事が本当なら櫻井氏の希望は叶うと思う。

話がずれるが今や東京の大学入試は試験を介して入学してくる定員数が減少しつつある。私のように知名度のない県立高校から東京(横浜)に出る夢を叶えてくれた入試という制度が縮小していくと東京の大学生は都会で育った私立高校出身者ばかりになりそうで少し残念に思う。

さて、次は麻布競馬場氏の「令和元年の人生ゲーム」というZ世代が織りなす世界を描いた小説。

※以下、ネタバレを少し含みます。未読の方はご注意を。

改めて「Z世代」と聞いてもどの世代かピンと来なかったのでググったら、1996年から2012年までに生まれた若い世代を指すとマッキンゼーは定義しているようだ。

考えて見れば私が大学を卒業した年に生まれた子が既に入社数年目ということになる。

本書では全編を通して登場する「沼田さん」の視点に注目が集まるが、第4話(令和5年編)の沼田さんの変化が気になった。

「環境の変化で簡単に潰れてしまった」といった趣旨の沼田さんの言葉と沼田さんが「通院」しているというセリフから沼田さんは勤務していた会社の人事異動で最前線(主要部署)に移ったのかもしれない。

バックオフィス業務でまったり会社員人生を送る生活からの環境変化で沼田さんも潰れてしまったのだろうか。

管理職になりたがらない若手社員が増えているとよく聞く。優秀な社員はいち早く転職すると言われるが、同時に主要部署に配属されてメンタルを病んで休職や退職をする社員も多い。

Z世代は「出世競争」に参加してもQOLが下がるだけでリスクが増すだけだと先輩の背中を見て悟っているのではないだろうか。

今年は各企業が新卒社員の給与水準を競うように引き上げ始めた。少子化に伴い人材獲得競争の激化もあるのだろう。

ただ、いわゆるZ世代が満足できる環境作りがなされないとせっかく採用した若手社員に出ていかれ、安定重視で攻めの姿勢のない社員ばかりになる可能性がある。

一方で簡単に解雇がされない日本のJTC(伝統的な日本企業)でまったり仕事するのがZ世代の理想の生き方なんだろうと感じた。

もちろん、キャリア構成のために東大を出てあえて楽天に就職する意識の高いZ世代もいることは確かだ。

外山薫氏、麻布競馬場氏の次作にも期待したい。


君の背中に見た夢は【電子特典付き】

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  • 作者: 外山 薫
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2024/01/30
  • メディア: Kindle版



令和元年の人生ゲーム (文春e-book)

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  • 作者: 麻布競馬場
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2024/02/21
  • メディア: Kindle版



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