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買い負ける日本【坂口孝則著】 [書評]

現在は落ち着きを多少、取り戻したが、コロナ禍で一時期、半導体不足やウッドショックと呼ばれる木材不足などが生活に影響を与えた。

半導体、LNG、食肉、そして海外からの人材など日本が世界経済が拡大する中、「買い負け」する理由とその対策、提言を書いたのが「買い負ける日本」である。実に興味深く一気読みした。

著者の分析によると日本がここ数年そして恐らく今後、買い負ける理由は大きく2つの要因があり「上部構造」と「下部構造」に分かれる。

「上部構造」は簡単に言えば日本経済が世界に占めるシェアや重要度の低下であり、資材の販売元から見て日本を優先する必要性が下がっているということ。

「下部構造」は3つに分かれ、「多層構造」「品質追求」「全員参加主義・全員納得主義」となる。

「多層構造」は買い手の慢心、「品質追求」は調達品の固定化、「全員参加主義・全員納得主義」は横並び意識を生む。

具体的にはこうだ。日本は世界経済から見た重要度が下がっているのにそれに気がついていない会社がある。そのため今まで通りの仕入れでは買い負ける。

交渉時に細かい品質を要求するが、他国はそれほどでもないので他国を優先される。それ以前に発注するまでに日本企業では階層的な承認が必要でスピードが遅い。だったら他国の現地で決めてくれる企業が優先される。また日本企業の承認にも新しい仕入れ部品にチャレンジすることなく皆が納得するまで時間をかける。

日本という国の重要度が下がっているのに決断のスピードが遅く、古い型の商品を低ロットで注文してきて品質管理にはめっぽう、うるさい。だったら他国に売ったのが合理的であり、つまり日本が買い負けるということである。

本書ではコロナ禍での調達で苦労した経験から改善に動く日本企業の一例も登場したり、著者による建設的な買い負けを防ぐための提言も書かれている。

特にメーカーや卸し、商社等に関わる方以外でも一般消費者として十分、役に立ち唸らせられる内容の本だと思った。

今後、新興国が成長を続けて先進国もDX化が加速していく中、従来の意識の日本企業は買い負けすることが増えるだろう。ましてや円安時代でもある。

日本企業も馬鹿ではないので既に対策を取っているだろうし、著者の坂口氏の提言を参考にする会社も出てくることだろう。さもなければ仕入れができなくなり企業として終わるだけである。

今まで殿様状態で仕入れをしてきた日本企業の意識、風習改革が必要だし、繰り返すが円安が進んでいる。一消費者として本書は実にためになった。おすすめの1冊である。


買い負ける日本 (幻冬舎新書)

買い負ける日本 (幻冬舎新書)

  • 作者: 坂口孝則
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2023/07/26
  • メディア: Kindle版



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