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Phantom【羽田圭介著】 [書評]

私はあまり小説は読まず、読んでも経済小説なのですが、例外で羽田圭介氏の著書はなぜかよく読んでいます。

本書の内容は「米国株の積立投資でFIREを目指す独身OL、一方で有り金を使いオンラインサロンにハマる主人公の彼氏」の対照的な生き様が描かれています。

羽田氏と言えば芥川賞受賞者である一方でテレ東系列でバスの旅番組にレギュラー出演していたなど幅広く活躍されています。

裕福な層から一般的な若者の生態まで幅広く把握している点が羽田作品が面白い要因だと思います。

本書は後半に一気に作風が変わり怒涛の展開を見せます。私はオンラインサロンというものに入会したことがないので実際に「オンラインサロンがどういうものか」について知識がなかったのですが、なんとなく雰囲気は本書で掴めました。

本書ではオンラインサロンを(多分)誇張して描いているのだと思いますが、今後、本書に出てくるようなサロンが生まれる可能性もないとは言えない怖さを感じました。

羽田氏は週プレで投資に関する定期連載をしていただけあって投資に関する記述は頷く点もありました。

FIREを目指して質素な生活をしていても明日、死んでしまうリスクもあります。一方で有り金を使って「今」を楽しんでも思い出だけ残って惨めな老後を送るリスクもあります。

この辺の対立するテーマを様々な出来事でところどころ読者に問うていますが、答えは個人それぞれによって違うでしょう。

個人的には主人公のように質素な生活を心がけ投資に資金を回す一方で、使うときには惜しげもなく資金を投入する価値観に共感します。

このブログでも前に書きましたが、お金は使ってこそ意味のあるものです。若いうちからFIREを目指して質素な生活をしている方もいるようですが、自己投資やPCなどのIT機器、SaaS等のソフトウェア(商売道具)にはある程度の資金は投入すべきだと感じます。

数時間で読める厚さですのでFIREやオンラインサロンに興味のある方にはオススメの本です。


Phantom (文春e-book)

Phantom (文春e-book)

  • 作者: 羽田 圭介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/07/14
  • メディア: Kindle版



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